今回は超回復について解説していきます。
筋トレ初心者であれば、「超回復」という言葉を聞いたことがないかもしれません。
その仕組みを知ることで、トレーニング効率が上がる可能性があるのでこの機会に是非チェックしましょう。
また「超回復はウソ!?」という説にも触れて、分かりやすく解説します。中級者以上にとっても新たな知識が身につくと思いますよ。
では本編にいきましょう。
目次
超回復とは
超回復とはトレーニングしてから一定時間経過すると、トレーニング前よりもパフォーマンスが高まる現象のことです。
少し乱暴な言い方をすると、トレーニングした後に適切な時間をあけると、やる前よりちょっと進化してくれるということです。
トレーニングにとって大切な3大要素は「トレーニングの質」「食事(栄養)」「休養」です。
その休養の部分の話が今回の超回復ということです。
ちなみに、筋肉がトレーニング直後に太くなったように感じる現象はまた別です。
それはパンプアップと言って、一時的に筋肉の血流(水分)が多くなることにより起こることです。
たとえるなら、祭りに似てるかもしれません。
祭り(筋トレ)がある時は、人や交通量(血流)が一時的に増加するということです。
祭りがあるからと言って、そこに住む人が急増するというありませんよね。
逆に、超回復は都市開発で定住する人が増えるということです。
すみません、逆に分かりにくくなりました。
さあ、続いてみていきましょう。
超回復の時間
一般的に、「24〜72時間」だと言われています。
適切な間隔をあけトレーニングをすることで効果アップが期待できます。
しかし、時間の見極めはかなり難しいです。
個人差もありますし、トレーニング部位にもよりますし、強度にもよります。
また、その時の体調、食事、フォーム、やり方、年齢などによっても筋繊維の破壊のされ方は変わります。本当にバラバラです。
ロボットのように毎回、寸分違わず全く同じフォームで、摂取したもの、体温など全て同じということはないですよね。
「じゃあ、超回復の時を見極めるのは無理じゃない?」と思いますよね。
そうです。なので、実際はそこまで神経質に見極める必要はありません。
ただそれだとさすがに不親切ですよね。
では、どう判断するのか?
一番は「自分と向き合うこと」です。
もちろん統計を参考に「24〜72時間」と頭に入れるのは大事ですが、それだけで全て解決しないのがトレーニングです。
なので、最後は自分自身の感覚に頼るということです。次の章で、そのコツをいくつかご紹介します。
どんなトレーニング、どんな競技をするにしても、もっと言うと人生において「自身との対話」は最重要に指定しておきましょう。
身体と対話するコツ
先ほども言ったように超回復を見極めるのは難しいです。
なのでポイントをいくつか知っておくと良いです。
よくある身体が出すサインにどう対処していくかご紹介していきます。
筋肉痛の時はどうする?
これが一番分かりやすいサインです。
脳が痛みの信号を発する理由を考えるとしっくりきますよ。
「脳が痛みの信号を出すのは、余計な運動をさせないようにし、破損した部位の回復に専念させるため」です。
「ちょっと待ってくれたら進化させたるから、今は邪魔せんといて」ということです。
つまり、筋肉痛の状態は、筋肉がまだ休養を求めているということです。
その時は筋肉が痛む箇所のトレーニングはひとまず避けて、他の部位をやりましょう。
筋肉痛はないけど、身体が硬くなっていたり可動域が狭くなっていたりする
この場合、疲労が溜まっている可能性があります。
トレーニング後に十分なストレッチをしていないと身体は硬くなってしまいます。
そういう意味で、可動域が狭くなっているのは疲労の蓄積ではないのでトレーニングは行えますが、そのままではいつか支障をきたします。
ストレッチもトレーニングの一環なので欠かさずしましょう。
気持ちが上がらず、少しダルい
こういったメンタルの変化もサインの一つです。
筋肉痛と同じで、脳は身体を休ませたい時にダルくなる信号を出すことがあります。
「これ以上やると体調崩すので、今はゆっくりさせてください」という脳の声です。
この声に打ち勝つことで強くなるんだ!
という気持ちも大事ですが、そればかり優先していると体調を崩して、結果マイナスになります。
時には「休む勇気」をしっかり持つのも大切です。
1週間ぐらいずっと筋肉痛が続く場合
これは負荷をかけすぎたオーバートレーニング(オーバーワーク)の時に起こりがちです。
こんなになるまで自分よく頑張った!
このように満足するのではなくて、むしろ負荷が適切ではなかったと反省しましょう。
トレーニングとしては非効率です。関節にも負担がかかり、怪我につながります。
例えば、「普段走らない人が根性だけでいきなりマラソンを完走した」とします。まず凄まじい筋肉痛になるでしょう。一方、その一回を頑張っただけで筋肉が猛烈に進化することはありません。
筋肉や神経は、良くも悪くも少しずつしか進化しません。
だから、適切な負荷を継続的に与え続けるのが大切だということです。
筋トレではなく、競技の練習は頻度が高くて大丈夫?
「超回復」という言葉を意識しすぎると「日々の練習するのもダメではないのか?」と思いますよね。
まず、トレーニングの目的を考えましょう。
競技の練習は、パフォーマンスアップが目的です。
筋持久力、腱、神経系、バランスなど、さまざまな要素がトレーニングによって向上します。
例えば、ピアノの練習のように「神経系」のトレーニングに近いことは、頻度は高い方が良いです。
神経系や脳などを鍛えるのに、週1回ほどしかやらなければなかなか上達しません。
スポーツの動きも脳に刷り込むような作業をしていきます。バスケットボールのフリースローでいうと、ずっと練習していると目をつむっても入れられるようになります。それが身体が覚えると言うことです。
また、特定の筋肉を集中的して疲れさせるのではなく、連動が主体なので、筋肉は満遍なく疲れます。そのため慣れると筋肉痛にもなりにくく、一回で疲れがドッとたまることもないでしょう。
以上のことから、筋トレのように長い休養は必要ないので、頻度をあげても大丈夫ということです。
当然ですが、全く休養がなければ身体全体の疲労がたまりパフォーマンス低下するので、うまく休むことも大切ですよ。
ちなみにボディービルダーさんはこの逆です。
筋肉を連動させるのが目的ではなく、細かく部位を分けて一つずつ肥大化させていくことが目的なので、疲れがたまりやすいので休養が必要ということです。
<以下をあわせて見ると、運動の強度に詳しくなりますよ>
超回復はウソ!?
ここは少し専門的な話になりますが、個人的な説も解説しているので是非目を通してください。
「超回復がウソではないか?」と言われることがあります。
結論から言うと、超回復は存在します。
筋繊維は太くなりますし、グリコーゲンの貯蔵量が増加します。
反対派の意見では、「毎日筋トレしてるけど筋肥大しているから、超回復は関係ない」という具合です。
これは超回復が、筋肥大にだけ効果があると勘違いされている例です。そもそも毎日できるようなトレーニングではそこまで長い休養も必要ないです。そして、グリコーゲンの増加のことを忘れています。
ここからは僕の仮説ですが、この勘違いは「超回復」という日本語訳に原因があるのではないか?という説です。
超回復は英語で「Supercompensation」です。
superは「超える、さらに」など強調するときにつけるお馴染みの言葉です。
compasationは「補償、埋め合わせ」という意味です。
Supercompensationを直訳すると「余分に補うこと」という意味です。元あった量より多く補うような感じですね。
「超回復」と「余分に補うこと」では、印象が少し違いませんか?
「補う」というのは、回復と言うより、なくなったもの埋め合わせるイメージです。
筋肉に対して「補う」というのは違和感があります。
筋肉は破壊されているけど、決してなくなってはいませんよね。
これをグリコーゲンに対していうとどうでしょう?
つまり、「”Supercompensation”は筋肉のことを言ってるのではなく、本来はグリコーゲンを指しているのではないか」ということです。
「枯渇したグリコーゲンを元々あった量よりも多く補う」といわれればしっくりきます。
もうちょっといきます。
日本語では、[トレーニング(トレーニング負荷)→回復期→超回復]という流れで説明されます。
英語では、[Training(Training load→Recovery period→Supercompensation]です。
さて、何かおかしくないですか?
英語だと、「Recovery period」「Supercompensation」と別の意味の単語を用いているのに、日本語では「超」をつけただけです。
ここの訳し方が誤解を生む一つのきっかけかもしれません。
これはあくまで僕の仮説ですが、それが今日まで尾を引いているのかもしれませんね。
The Beatlesの『Norwegian Wood』を日本語で『ノルウェイの森』と訳したようなものかなと思います。
本来は「ノルウェイ産の材木」という歌詞のはずです。とは言っても、これはこれで敢えて”森”と訳したなどの説もあるのでこれ以上は触れません。
とにかく、[超回復はウソ!?」という説は、日本語訳から生まれた勘違いが原因と僕は思います。
まとめ
今回は超回復についてまとめました。
賛否両論あったり、見極めが難しかったりしますが、トレーニングすれば身体が進化するというの真理でしょう。
また、ここまで散々「超回復」と言ってきましたが、そろそろ超回復という言葉に代わる新しい言葉をつくってもいいかもしれません。
説明した通り英語の訳とは少し意味も違いますし、もう2020年代なので、新しい訳が出てきても良い頃だと思います。
例えば、「超補給」の方が意味が近くなります。ま、超絶ダサいですけど。
というより、グローバル時代ですし英語のまま「Supercompensation」でも良いと思います。
どちらにしても専門用語なので、分からなければ調べますもんね。
というわけで、今回は「Supercompensation」について解説してきました。
最後までありがとうございました。
主な参考
・Masterclass『How Supercompensation Training Improves Your Workouts』
・Runtastic『UNDERSTANDING SUPERCOMPENSATION TO AVOID OVERTRAINING』
・山本義徳 筋トレ大学『休んでいる時にこそ筋肉は大きくなる!オフの日も無駄にしない、筋肉をつける過ごし方とは【筋トレ】』