たまに耳にするけど、「メッツ」って何なの?
トレーニングをしている方でしたら、一度は聞いたことがあるかもしれません。
フィットネスジムに通っている方は、トレッドミル(ランニングマシーン)などで、METS(メッツ)と表示されているのを見かけますよね。
しかし、日常ではあまり使われない言葉ですので、いきなり意味をちゃんと説明するとなると、意外と難しいかもしれません。
今回は、そんなMETSに少しでも馴染みが出るように、深く見ていきましょう。
目次
METS(メッツ)とは
Metabolic Equivalents(METS)の略です。
wikipediaでは「 metabolic equivalents of task」と書かれていましたが、今回は1990年に出された論文を参考にし、前者を採用しました。
日本語訳では、「代謝当量」と呼ばれています。(あまり使われていません)
これでは直訳みたいで分かりにくので、分解していきますね。
metabolicは、代謝です。
equivalentは、同等や等しいなど、同じ価値を表す時につかう単語です。
つまり、「活動・運動がどれだけの代謝に値するか」ということです。
では、より詳しく見ていきましょう。ここからは主にメッツと書いていきますね。
メッツとは運動や身体活動の強度を表す単位です。
安静時(静かに座っている状態)のエネルギー消費量を1メッツとします。
安静時とは、1分間で体重1kgあたり、3.5mlの酸素摂取量が基準となっていますよ。
それと比較して、「活動・運動がどれだけのエネルギーを消費するかを表す」のがメッツというわけです。
ここでメッツを使った消費カロリーの計算式も見てみましょう。
消費エネルギー(kcal)=メッツ×実施時間(時間)×体重(㎏)×1.05
3メッツの活動を1時間、体重60kgの人が行うと、189kcal消費するということです。
これを知っていれば、日常生活でのカロリー消費も計算しやすいですね
いつできたの?
1990年、カナダのオタワ大学にて、
『Metabolic Equivalents (METS) in Exercise Testing, Exercise Prescription, and Evaluation of Functional Capacity』という論文が発表されています。
この論文が現在の考え方に直結している思います。
日本では、2006年に厚生労働省が『健康づくりのための運動指針 2006』の中で、METSの考え方を発表したのをきっかけとして、徐々に浸透していったと思われます。
両方、自分調べなので、間違っていましたら申し訳ありません。
とにかく、説の入れ替わりが激しいこの世界で、30年以上前から存在している考え方が、いまだに使われているのは割と凄いことです。
実例(メッツの表)
お待たせしました。ここからは表を見ていきましょう。
かなり詳しく見てきたので、メッツの概要は分かってきたかなと思います。
でも正直、表を見ないことには、よく分からないですよね。
運動だけではなく、日常の活動の例もありますので、よく見ると結構おもしろいですよ。
生活活動のメッツ表
METS | 生活活動の例 |
1.8 | 立位(会話、電話、読書)、皿洗い |
2.0 | ゆっくりとした歩行(平地、非常に遅い=毎分53m未満、外・家の中)、料理や食材の準備(立居、座位)洗濯、子供を抱えながら立つ、洗車・ワックスがけ |
3.0 | 普通歩行(平地、毎分67m、犬を連れて)、電動アシスト付き自転車に乗る、家財道具の片付け、子どもの世話(立位)、台所の手伝い、大工仕事、梱包、ギター演奏(立位) |
3.5 | 歩行(平地、毎分75~85m、ほどほどの速さ、散歩など)、楽に自転車に乗る(毎時8.9km)、階段を下りる、 軽い荷物運び、車の荷物の積み下ろし、荷づくり、モップがけ、床磨き、風呂掃除、庭の草むしり、子どもと遊ぶ(歩く/走る、中強度)、車椅子を押す、釣り(全般) 、スクーター(原付)・オートバイの運転 |
4.0 | 自転車に乗る(毎時16km未満、通勤)、階段を上る(ゆっくり)、動物と遊ぶ(歩く/走る、中強度)、高齢者や障がい者の介護(身支度、風呂、ベッドの乗り降り)、屋根の雪下ろし |
5.0 | かなり速歩(平地、時速6.42km)、動物と遊ぶ(歩く・走る、活発に) |
6.0 | スコップで雪かきをする |
8.0 | 運搬(重い荷物) |
8.8 | 階段を上る(速く) |
運動のメッツ表
METS | 運動の例 |
2.3 | ストレッチング、全身を使ったテレビゲーム(バランス運動、ヨガ) |
2.5 | ヨガ、ビリヤード |
3.0 | ボウリング、バレーボール、社交ダンス(ワルツ、サンバ、タンゴ)、ピラティス、太極拳 |
3.5 | 自転車エルゴメーター(30~50ワット)、自体重を使った軽い筋力トレーニング(軽・中等度)、 体操(家で、軽・中等度)、ゴルフ(手引きカートを使って)、カヌー |
4.0 | 卓球、パワーヨガ、ラジオ体操第1 |
4.5 | テニス(ダブルス) ※、水中歩行(中等度)、ラジオ体操第2 |
5.0 | かなり速歩(平地、速く=毎分107m)、野球、ソフトボール、サーフィン、バレエ(モダン、ジャズ) |
6.0 | ゆっくりとしたジョギング、ウェイトトレーニング(高強度、パワーリフティング、ボディビル)、バスケットボール、水泳(のんびり泳ぐ) |
6.5 | 山を登る(0~4.1kgの荷物を持って) |
7.0 | ジョギング、サッカー、スキー、スケート、ハンドボール※ |
8.0 | サイクリング(約毎時20km) |
8.3 | ランニング(毎分134m)、水泳(クロール、ふつうの速さ、毎分46m未満)、ラグビー※ |
9.0 | ランニング(毎分139m)8.34km/h |
10.0 | 水泳(クロール、速い、毎分69m) |
10.3 | 武道・武術(柔道、柔術、空手、キックボクシング、テコンドー) |
11.0 | ランニング(毎分188m)、自転車エルゴメーター(161~200ワット) |
いかがでしょうか?
僕としては、バレーボールと台所の手伝いが同じメッツというのは、さすがに違和感がありました。
特に球技系は、やる人のレベルによって強度は相当変わってくるので、一概には言えないということでしょう。
どのレベルに基準を置いてるのかはちょっと疑問ですよね。
逆に、ランニングや水泳ではスピードをしっかり示してくれているので、比較しやすいですね。
このようにギャップを感じるのもあったとは思いますが、大体は納得いきましたか?
省略している部分もありますので、より詳しく知りたい方は参考欄から見てください。
あと、2012年に国立健康・栄養研究所が日本版として、『改訂版 『身体活動のメッツ(METs)表』』を出しています。
この表では活動内容がより細かく紹介されています。
先のバレーボール問題も、試合や試合以外など細かく分類されています。
とは言え、これはこれで「ボクシングのサンドバッグ」が”5.5″メッツとされていたので、少し疑問でした。
関連記事
以下の記事では、METsで言うと10.0以上にはなるとされる、
「HIIT(高強度インターバルトレーニング)」について紹介しています。
メッツを使った活動習慣
先述の『健康づくりのための身体活動基準2013』の中で
生活習慣病予防だけでなく、社会生活機能の低下のリスク低減も重視した、生活活動・運動の基準を示しています。
せっかくの機会なので、こちらも紹介しておきます。
身体活動量の基準(日常生活で体を動かす量の考え方)
<18~64 歳の運動の基準>
身体活動量の基準(日常生活で体を動かす量の考え方)
強度が 3 メッツ以上の身体活動を 23 メ ッツ・時/週行う。(歩行又はそれと同等以上の強度の身体活動を毎日 60 分以 上行う、歩数で 1 日当たり約 8,000~ 10,000 歩)
※『健康づくりのための身体活動基準2013』より抜粋
歩行だけに限定して、歩幅が70cmだとすると、毎日5.6km-7kmほど歩く計算になります。こう見るとなかなか厳しいですね。
ただし、これは生活活動のトータルで見ていいので、本来はお風呂掃除、階段を上るなどのさまざまな要素がミックスされます。
ですので、トータルで計算してどうか、ということですね。
運動量の基準(スポーツや体力づくり運動で体を動かす量の考え方)
<18~64 歳の運動の基準>
運動量の基準(スポーツや体力づくり運動で体を動かす量の考え方)
強度が 3 メッツ以上の運動を 4 メッツ・時/週行う。具体的には、息が弾み汗 をかく程度の運動を毎週 60 分行う。
※『健康づくりのための身体活動基準2013』より抜粋
日常生活での活動だけでなく、「運動も習慣化してください」という推奨ですね。
「1週間に60分程度の運動は、健康を保つ上で大切」と、統計で示されているみたいです。
65 歳以上の基準
<65 歳以上の身体活動(生活活動・運動)の基準>
強度を問わず、身体活動を 10 メッツ・時/週行う。具体的には、横になったままや 座ったままにならなければどんな動きでもよいので、身体活動を毎日 40 分行なう。
※『健康づくりのための身体活動基準2013』より抜粋
高齢になっても、日常生活の中で身体を積極的に動かした方が良いということですね。
いくつになっても、モチベーションを保ち、動いていくのが大切です
まとめ
今回はMETSについて深く見てきました。
今まで馴染みがなかった方も、考え方は分かっていただけたかと思います。
人間はやはり、ある程度は身体を動かした方が良いみたいですね。
これを使えば、「いつも、どの程度の身体活動をしているか」が分かりやすくなると思うので、一度ご自身で確認してみてくださいね。
より詳しく知りたい方は参考から見てください。
最後まで見ていてただき、ありがとうございました。
参考
Wiley Online Library
国立健康・栄養研究所 改訂版 『身体活動のメッツ(METs)表』